どちらも豪華キャストがウリだが、同時に弱点にもなっている。
「誰が犯人か?」がテーマだから、一人だけ有名俳優を出すわけにもいかない。
結果的に全体が賑やかになるが、各々は軽く扱われることになる顔見せ的な映画になる。
その点、新作 『ねじれた家』映画版 はひと味違う。
出演者ほぼ全員が英国の演技派で固められ、スターといえるのは、G.クローズ とG.アンダーソンくらい。
だからといって、即彼女らが犯人だったらおもしろいわけがない。
全員の怪しげな振る舞いが「殺人はあったのか?犯人は?」という純粋な興味をそそる。
基本的には原作イメージにかなり忠実な映画だ。
とはいえ、ラストのカーチェイスはサービス精神のつもりか? ご愛敬な気がする。
また依頼者の美女の設定が原作と異なるなど、これまでにない味わいも出している。
一方で、本原作が「クリスティの最高傑作」というのにはかなり異論がある。
「葬儀を終えて」の大トリック、「忘れえぬ死」の叙述、「杉の棺」の人物像の方が上のような気がする。
本作はポアロもマープルも出てこないため、評判のよかったTVシリーズにおいて映像化されていない。
『ゼロ時間へ』、『終わりなき夜に生まれつく』、別名義の『暗い抱擁』などにも同じことがいえる。
『殺人は容易だ』 も個人的に映像化して欲しい作品だ。
これらのさらなる傑作群は映像化可能だろうか?
いずれにしろ、本映画はクリスティの映像化においては新たなランドマークといえる。
ラベル:映画・ドラマ