(廃線区間)
この路線はかつて 札沼線 と呼ばれ、新十津川の先、沼田まで走っていた。
私は札幌に長く住んだが、あまり縁のない路線であった。
にも関わらず、この路線には強い印象を持っている。
というのも島田宗司の『奇想、天を動かす』の舞台となっているのだ。

奇想、天を動かす (光文社文庫) - 島田 荘司
この作品はミステリー史上でもユニークな地位を占めるもので、社会派ミステリーとトリッキーな謎解きを両立させたとされる。
成功しているかは、各自が読んでみないと分からないだろう。
読者を選ぶかもしれないが、力作であるのは間違いない。
劇中作である『ピエロの謎』は単独でも幻想的で魅力的だ。
また作中で札沼線を巡る死体移動トリックは、私がすべてのミステリー小説の中で最も驚愕したものである。
まず当てられる人はいないだろうし、これを超える驚きにはもう出会えないであろうというクラスのものだった。
この技が実行可能かはともかく一応理屈は通っている。
肉体能力だけでなく、心理の隙を突いているのも好みだ。
現在の学園都市線というのどかな名前からは想像もつかない作品であった。
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